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メール・マガジン
「FNサービス 問題解決おたすけマン」
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★第018号 ’99−10−22★
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万一に備える
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●人を信じるのは良い、
しかし、仕事はチェックしなくてはいけない、、と申しますね。 これ、常識。
ご自身もお仕事なさるに違いないが、多くの部分を誰かに任せて推進なさる。
人の手を通じて何かを達成する、それが管理職の仕事。 その仕事の中でも、
任せた部分のチェックは特に大切です。 どんな性善説派であろうとも。
第一、チェックしなかったら、不安が解消できないでしょう? いくら不安に
耐えるのが仕事だとは言っても、チェックすらしないでは監督責任に背きます。
モンダイのJCO社は言うに及ばず、我が科学技術庁および原子力安全委員会
もまた、その点まさに、無責任でしたな。
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●JCOに対する監督
省庁は科学技術庁、準拠する法律は原子炉等規制法、、ですが、現実は野放し。
「原発」はそれに基づいて13ヶ月に1回、運転を停止して、国の試験官の立ち
入り検査を受けることが義務づけられている。もちろんそれには、検査の手順や
内容が適切に定められており、それに従って、、でしょう。 信じるほかない。
*
ところが、JCOのような「関連施設」については定期検査の規定が無く、事業
者が独自に保安規定を設けることを<求める>に留まるのだという。即ち、安全
管理はすべて事業者自身に一任されているわけ。 性善説オンリー、ですな。
一口に「関連施設」と言っても色々あるだろう。その中では、燃料加工施設である
JCOは、「炉をもっていない」から心配無用と思われたのかも知れないけれども、
炉が無いだけに「燃料」はむき出し。 見方によれば、この方がよほどコワイ。
▲今回の事故後、科技庁は全国の核燃料関連施設に緊急立入検査を開始
したという。 「緊急」の2文字に、前号記載のウロタエが見えますな。
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「一定量以上の核分裂物質が集まり、核分裂が持続的に進む」のが核の「臨界」と
称するのだから、事実上、炉の有無とは無関係。しかし常識では、それほどの量を
「集める」ことはあり得ない、と言う。 が現実に、JCOは「集めた」ぜ。
それを「事故自体は単純なミス」と表現する人もいる。 たしかにそうでしょう。
しかし人間が犯す誤りは、たいていは「単純な」ものなのです。 監督者は普通、
いかに単純ミスを起こさせないか、に技術的工夫を重ねるものです。
* * *
ところがJCOは「普通」でなかった。 本来「そうさせない」立場の人が手抜き
方式を手順書にまでまとめ、それに基づいて作業を行なわせた。現場リーダーは
それをさらに「効率化」した。 「効率オンリー」の社風、というべきか?
ところが「効率」だけで、「万一」を考えることを怠った。 楽観か、慢心か。
チェックする立場の人は、何をチェックしていたのか? 「裏手順書」通りに
ちゃんと「手を抜いて」いるか、かな? これはもう、悪い冗談。 実は、
何もチェックしていなかった、、、でしょうね。 素晴らしき上下信頼関係!?
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●資源エネルギー庁原子力発電安全管理課
は、「事業者が保安規定で十分な防災対策をしていれば」問題ないはず、と言う。
しかし、「、、していれば」の前提が成り立っていないのだから、「問題ない」
とは行かなかった。 性善説のアッサリ負け。
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いや、ここでの性善説とは、「監督責任の放棄」同然。 当今の「学校崩壊」も、
元をただせば「子供性善説」に発する、という説があります。 純真な子供が、、
で監督や躾を怠った結果、ドーブツ園になってしまった。 親もドーブツ。
学校の崩壊は国の将来にとって大問題ですが、瞬時に破滅が訪れることは無い。
どこかに挽回を図る余地を見いだすことは出来る、、と信じたい。が、原子力の
世界が「崩壊」したら、、イッパツですぜ。 ぜひ、性悪説でお願いしたい。
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「関連施設」と言えども、行なわれるのはすべて専門的業務ですから、その筋の
人なら、外部からでも大まかには見当を付けることが出来るはず。従って政府は、
専門家を雇い、たとえばケプナー・トレゴーの「潜在的問題分析」のような論理
的手順に沿って、チェックすることは可能であったはず。
ただし、そこで用いられる検討材料は当然、各企業提出の工程資料だろうから、
その確かさを当初的、かつ随時抜き討ち的にチェックする仕組みにしておく必要
があった。 JCOほど非道ではなくとも、実体とかけ離れたものになっている
ことは、ほかのどこにでもあり得たことでしょうから。
もとがオモテ資料に基づいて考え出される「予防対策」、「緊急時用対策」です
から、オモテ方式で運営される限りは、事故発生の場合もそれなりには役立つ。
が、ウラ方式で運営されてしまったら、起きる事故も多分、想像のほかだろう。
せっかくの事前準備も水の泡。 「万一」に役立つのはホンネだけですよ。
* * *
おいおい、こっちは原子力関係で働いているわけじゃないぜ、、 ですか?
分かります。が、JCO事件は教訓豊富な生きた事例。これを材料に、「あなた
の危機管理」を研究して下さい。 あなた周辺の外部委託業務に当てはめて。
そこで、質問。 その仕事を委ねる相手に、どんなチェックをかけていますか?
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●たとえば、「大丈夫かね?」
ですか? それはおよしなさい。訊く前から答は分かっています。たいてい
「はい、大丈夫」でしょうから。 その答で、あなたは安心するのですか?
「する」と言われたら、こちらは不安になりますぞ。
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どうしてか、って? では。 あなたの関心はどの点についてでしたか?
相手が「大丈夫!」と答えたのは、間違いなくその点について、でしたか?
あなたの関心の点と相手のそれとが一致している、と言えるのなら宜しい。
一つのことを論じながらも、それぞれの立場によって、目の付け方は大いに
違うのが普通ですからね。 で、あまりアバウトな質問ではダメなのです。
そこで、たとえば前回ご紹介したケプナー・トレゴー「潜在的問題分析」の
手順に沿って、その仕事のどの部分、どの問題、どの対策、についてである
かを明らかにして確認することをお奨めいたします。
そうすれば、行き違いもなく、やり取りの効果も高まり、監督責任も果たし
やすかろう。それが「あなたの安心」というものではあるまいか、と。
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毎度繰り返しますが、このメルマガは「教科書」ではありません。ここでは
簡単に、そのような場合のチェックに役立つ質問を並べるに留めます。
(0:「相手」と「委ねること」は決まっているという前提です。)
1:それを、どんな手順で進めるのか?
2:その手順の、どの辺がアブナイと考えているのか?
3:その辺で起きるトラブルとして、どんなことがあり得るか?
4:そのトラブルは、どんな原因で起きると考えられるか?
5:その原因をつぶすには、どんな方法があるか? (予防対策)
6:そのトラブルが起きてしまった場合、どんな手段で対応するのか?
(緊急時用対策)
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こう切り刻んで尋ねれば、あなたがどこに目を注いでいるか、は相手にも
よく分かります。そして、それぞれに対する相手の答が、あなたの考えと
一致するなら、「うん、この点は大丈夫!」とうなずいて良いわけです。
一致しない場合には、お互いの考えをぶつけ合って、「じゃ、こうしよう」
とまとめれば良い。すぐにはまとまらない場合にも、少なくとも不一致点は
確認できますから、検討の継続ないし重点的監視が可能になります。
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●JCOの工程運営は
あまりにも不条理かつ反社会的で、可能だったはずの予防的アイデアは全く
無視されました。 直接的予防対策が実行できたのはJCOだけだったのに。
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街のガソリン・スタンドですら危険物取り扱い責任者を置き、教育を施す。
それに比べて遙かに危険、かつ高度な専門知識を要する物質を取り扱う仕事
場で、作業リーダーが「臨界」なる現象すら知らなかった、と。 ほんと?
同じ「燃料」業界ではあっても、ずっと高い支払いを受けていたであろうに、
みずから専門知識の獲得に励むことも無かったんですかね? もちろん教育
を怠ったJCOが宜しくないが、ついでに言うなら、そんな程度の資質の人
を採用し、そんな怠慢を許していた管理体制も実に宜しくない。
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滅多にしない作業、いつもとは異なる材料、無知な現場リーダー、未経験の
作業者、、 これだけ悪条件が重なったら、普通はより高次の責任者が立ち
会い、マニュアルと首っ引きで、とするだろうに、、、。
上席者が立ち会わなかっただけでなく、作業リーダーも肝心の時にその場を
離れており、裏マニュアルをさらに崩した指示が出され、、という、この上
なく念の入ったマネジメント原則無視体質。 何を考えているのやら?
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●会社ぐるみ、覚悟の違反
を犯すなら、せめて万一の場合に備え、緊急時用対策くらい準備・徹底して
おいて欲しかったが、もともとが考え無しだから、そこまでするわけも無い。
事故が何をもたらすか、その重大さにも無関心。警報音にも「誤動作だろう」。
当然、外部への通報・連絡も遅く、かつ表現は不適切、、 そのような場合に
各自どう行動すべきか、連絡体制の教育もしていなかったという。その結果、
役場にファクスが入ったのは、事故発生1時間後。いわく「臨界事故が起きた
可能性がある」。 おお控えめな! 小さな火を見ても大声で「火事だあ!」
と叫ぶのが世間の常識だろうに。 教養が邪魔した、というやつですかね?
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●行政側も油断
していましたな。村にはせっかく「防災無線」が設けられていたのに、それで
知らされるには、何故かさらに1時間を要した。つまり周辺市民が知ったのは、
事故発生何と2時間後。 村が村民を本当には愛していないこと、歴然です。
役場の皆さん、あんたたち二次的加害者なんだぜ。風下で屋外作業をしていた
民間事業所の7人が、知らされぬままに被曝しているのだから。
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各事業所内の警報音が、そのまま地域全体に鳴り響くようにするのはいかが?
「時々誤動作があった」とも言うが、ほんとはマイナー事故が頻発していたの
かも知れない。タイムラグなしに村民へ伝える方法、介在する人間の無意味な
遠慮に妨げられない伝達方法、、、何だろうと、このエレクトロニクス時代、
難しい、出来ない、なんてことあり得ないでしょうが。
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事故発生時、周辺各所に配置された公害技術センターのセンサーは、急激な
放射能の増大をたしかに検知・記録・発信していたのだ。 ところが、この
データが役場に送られ、パソコンに入っていたにも拘わらず、誰も見ようと
しなかったし、その信号で自動的に警報が発せられるようにも仕組まれては
いなかった。 ファクスで知るまでの1時間、そのデータはただ眠っていた。
どうしてこうも緊迫感の無い行動ぶりなんでしょうかね? 平和ボケ?!
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●一方、公害技術センターは、
検知された放射能が「一瞬だった」のと、その原因が不明なので、「確認し
てから報告しようと考えた」ため、行政への報告が遅れたという。
原因が何であろうと、異常な数値が検知されたら、ともかく知らせておいて
から究明に取りかかる、、、 くらいの緊迫感があって良いのではないか?
「自然現象でも異常な数値が検出されることがあるから、、」とは言うが、
そんな研究的姿勢では、<異常への対応>は難しいのではございませんか?
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●予防対策を「講じ得た」のはJCOのみ、
周辺関係機関において可能なのは緊急時用対策だけ、これは当然です。実際、
前記警報装置、防災無線、ファクス、センサーなど、どれも臨界事故の予防
には役立ち得ないが事故発生において役立つはずのものです。即ち、緊急時
用対策。それらが<あらかじめ>設置されていた。 ハードだけは、ね。
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緊急時用対策というのは、その場になってウロタエルことが無くて済むよう、
<あらかじめ準備しておく>ものです。しかし、それを有効に機能させるの
に大切なのは<起動のタイミング>と<指示者><実行担当者>。これらも
<あらかじめ>決めておく必要があるのです。 つまり、ソフト部分。
今回のJCO臨界事故では、それらソフト部分の不完全さが露呈された。
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ソフトにバグは付き物。 デバッグを兼ねて、訓練に励んでおくべきでした。
それも<あらかじめ>の一部なのですが、、、それが無かった。
消防署とタイ・アップの避難訓練を実行したのが、周辺13事業所中わずか
4のみ。 もちろんJCOは「4」の中に入っていませんでした。 万一の
時にも決して呼ばない、、、わけにも行くまい。なら、しておくべき、、、
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●皆さんのお仕事においても
トラブルなきことを期するには、相当の工夫と訓練が必要です。
第一には、トラブルが無い方が良いに決まっているのですから、可能な限り
予防対策に力を入れること。 しかし「万一」は常にあり得るので、第二に
緊急時用対策を準備する。 そして<ベータ版>には、入念なテストを。
JCOの臨界事故は、大げさでなく国辱的事件でした。 が、ひとごとでは
ありません。 「ひとのふり見て、我がふり直せ」ですぞ。
■竹島元一■
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